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お風呂掃除=15分⁈『脳の錯覚』から見えた、子どもたちの心に寄り添う支援

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ひなた川岸校の和泉です。

他の家事や仕事はマメにこなして片付けているのに、なぜか『お風呂掃除』だけは異常なほど億劫に感じてしまう。そんな経験は私だけでしょうか。
お風呂掃除に関しては『なんだかすごく時間がかかりそう』という漠然とした心理的ハードルをどうしても越えられず、いつも、『今はしなくてもいい家事』を優先し、お風呂掃除を迂回してしまうのです。重い腰を上げて、イヤイヤでお風呂掃除と向き合う日々。お小遣い作戦で1回¥50で子どもに委託しましたが、それでも1ヵ月に何度かは私自身が向き合わなければならないお風呂掃除。

◎目測15分、結果はまさかの…
数年前、『お風呂掃除って何分くらいかかるのかな?』という疑問が湧き、実際に測ってみることにしました。測る前の予想は『15分くらいかなぁ』と。よーいスタートで浴槽を洗い始め、洗剤を吹きかけ、ブラシで洗い、泡をシャワーで流してストップウォッチを止めました。そこで出たタイムは、なんと1分。(あ、浴槽だけです。)たった60秒で浴槽洗いが完了してしまったのです。

◎動けなくしていた正体は『脳の錯覚』
私は、もともと『時間の見積もり』があまり得意ではなく、思い込みもあり、脳が勝手に『お風呂掃除には15分もかかる』『これは大仕事だ』と実際の時間以上の規模に変換し、自分自身にブレーキをかけていたようです。実はこれ、脳の『できるだけラクをしたい』『エネルギーを使いたくない』という『省エネ機能』で、『今のままでいたいという現状維持のブレーキが働いている状態』なんだそうです。変化を嫌い、面倒なことから身を守ろうとする、人間にとってごく自然な仕組みなのだとか。

◎見方が変われば、子どもたちの支援も変わる
この『脳の錯覚』を知ったとき、私の頭に思い浮かんだのは、放課後等デイサービスで日々向き合っている子どもたちの姿でした。
たとえば、学校から帰ってきて『宿題のプリントをやりたくない』と、椅子に座ったまま完全にフリーズしてしまう子。
新しい活動や、みんなで行う運動遊びの誘いに対して、反射的に『やりたくない』と強い拒否反応を示す子。
あるいは、今楽しんでいる遊びから『活動の時間だよ』『お片付けの時間だよ』と声をかけた途端、聞こえていないかのように動きが止まってしまったり、『まだ遊ぶ!』と頑なに動こうとしなかったりする子。
これまでの私であれば、『どうしてすぐに取り組まないのだろう』『少し頑張ればすぐに終わるのに』と、どこかもどかしく感じていていたかもしれません。しかし、自分自身がお風呂掃除で見事に『脳の錯覚』にハマっていた体験を通して、子どもたちの内面をまったく違う角度から深く理解できるようになりました。
子ども達は決してサボっているわけでも、ただわがままを言っているのでもありません。頭の中でこれからの見通しがまったく立たず、目の前にある課題やプリントが途方もなく巨大で、果てしない過酷な作業に感じられてしまい、圧倒されて動けなくなっている状態なのだと腑に落ちたのです。

◎必要なのは『根性』ではなく、ハードルを下げる工夫
大人でさえ、ほんのちょっとした脳の錯覚によって見事に動けなくなってしまうのですから、心も体もまだ発達の途中にある子どもたちならなおさらです。だからこそ、こうした場面で必要なのは『もっと根性を出しなさい』『早くやりなさい』という精神論ではありません。
大切なのは、脳にかかる負担や心理的ハードルをぐっと下げるための『見通し』や『スモールステップ』の具体的な工夫です。
『1分で終わるよ』『ここまでやったらおしまいね』と、ゴールの終わりを具体的に示して可視化する。途方もなく見える巨大な課題を細かく分割し、最初の一歩のハードルを思い切り下げる。
こうした丁寧なアプローチによって、『これなら自分にもできそう』『この短さなら頑張れそう』という安心感が生まれ、子どもの内側から自然と『やってみよう』という前向きな気持ちを引き出すことができるのです。

◎『面倒くさい』の裏側に寄り添える支援を
大人も子どもも関係なく、私たちは日々の暮らしの中で『脳の錯覚』にとらわれ、一歩を踏み出せなくなることがあります。
子どもたちの口から飛び出す『面倒くさい』『やりたくない』という言葉の裏側には、実はこうした不安や思い込み、そして先の見通しが立たないことからくる戸惑いや恐怖が隠されているのかもしれません。その小さなサインを見逃さず、受け止め、寄り添える支援をこれからも大切していきたいと思います。小さな日常の気づきは、日々の療育や支援の本質を改めて教えてくれる、とても大きなきっかけとなりました。

みなさんも、今日から『面倒くさい』と感じることに直面したら、まずは『1分だけ』と試してみてはいかがでしょう? 案外すんなり動き出せるかもしれません。

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